「ソニーの葛藤、日本映す
逆転許した成功の落とし穴
こだわりすぎたウォークマン
2011年10月16日 日経新聞 11面」
アップル創業者のスティーブ・ジョブス氏が死去し、世界中が
追悼の意と偉大な業績をたたえました。
そのジョブス氏が「アップルの目標はソニー」と公言していた時期も
ありましたが、現在では状況は一変しています。
アイフォンなどで飛躍したアップルは株式時価総額で世界一の座を
獲得した一方で、ソニーはヒット商品の不在に苦しみ、業績も
さえません。
市場の見方でも、ソニーは新たな価値を生み出すどころか、過去の
遺産を食い潰し、企業価値はさらに下がると厳しい見方をしている
ようです。
なぜソニーは輝きを失ってしまったのか。
ひとつは「イノベーターのジレンマ」と呼ばれる現象といわれています。
特定の技術や事業モデルで成功したがゆえに、次の波を掴み損ねる
という、勝ち組に良くある落とし穴です。
ウォークマンの成功でiPodに遅れを取り、平面ブラウン管ベガの
ヒットで液晶やプラズマ部門で遅れを取ってしまいました。
そこに経営者の世代交代に伴うもろもろの変化が起こりました。
ソニー創業者の井深氏と盛田氏といえば、知らない人のほうが
少ないかもしれませんが、この二人のカリスマが引っ張ってきた
組織を同じ力で動かすことが出来る人がいなかったといっても
仕方ないかもしれません。
事務系出身の出井前会長は、技術者優位の組織の中で経営の効率化
を目指し、結果としてすぐには利益にならないが将来の柱となる
技術を開発する先行投資にブレーキが掛かってしまいました。
そして、個人の志向の問題もあったと指摘されています。
ソニーといえばオリジナリティあふれる独自の技術や、犬型
ロボット「AIBO」のように世間が気付かなかった新しい価値を
提案してくれるパイオニアシップあふれる企業、というイメージ
です（私の私見ですが(^^ゞ）
しかし、ソニー関係者の中には、
「最近のソニーの人は野心の持ち方が昔と違ってきた」
「以前はこの技術で世界を変えたい、とか、誰も挑戦していない
ことに挑戦したい、という人間があちこちにいたが、今は必ずしも
多くない」
という感覚もあるようです。
ソニーで何かしたい、というより、安定しているソニーに所属したい
という人のほうが大多数になってしまったのでしょうか。
ソニーは日本企業や日本社会のひとつの象徴のように感じます。
過去と現在の落差から浮かび上がるのは、日本全体に共通する問題
でもあるでしょう。
といっても、ソニーも日本も終わってしまったわけではありません。
私たち現役世代は、新しい価値や成功を自分で探し出していこうという
気概を持って生きたいですね。
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